執筆日:2021.06.03

所有者不明土地をめぐって③不要な土地は手放せる!?

司法書士

竹下康智
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みなさんこんにちは、司法書士の竹下です。

近年はアウトドアブームが過熱して、キャンプのために山林を購入してしまう芸能人までいるそうですね。
しかし、山林といえば、林業でもやっていない限り、扱いに困る不動産の代表格でした。

これまで、山林や農地のように、自分は使わないけれど買い手がつかないため処分することもできない不動産が遺産に含まれているとき、相続人の誰かが引き継がざるを得ませんでした。
ところが、故郷を離れている相続人がそのような不動産を管理するのは困難なことです。
結果、多くの不動産が手入れもされないまま放置されていたり、相続登記も未了であったり、というのが実状なのです。

国に引き取ってもらえる制度ができた

このような不動産を増やさないため、「相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律」、略して「相続土地国庫帰属法」が成立しました。
これは、相続により引き継いだ不動産が不要であれば、国に引き取ってもらえるという制度について定めた法律です。

詳細についてはまだ決まっていない部分が多いのですが、これまで事実上不可能だった不動産所有権の放棄が、一定の手続きを踏めば可能になった、という点では非常に画期的な法律といえます。

この手続きは、
法務局への申請→現地調査→承認(または否認)
という流れになっており、「申請のための条件」と「承認のための条件」が定められています。
現時点で明らかになっているこれらの条件についてご紹介します。

申請と承認の条件

申請するための条件
土地の所有権を国庫に帰属させるための申請は、土地が次のいずれかに当てはまる時には行うことができない、と定められています。
① 建物が建っている
② 抵当権や借地権等が設定されている
③ 通路として利用されている
④ 有害物質で汚染されている
⑤ 境界の位置や所有者が誰かということについて争っている
該当する項目が解決可能であれば、問題の解消後に申請をすることになります。

承認を受けるための条件
申請後に法務局が調査を行った結果、次の①から⑤のいずれにも該当しないと判断されたときには、法務局は土地の引き取りを承認しなくてはならないと定められています。
何もない更地であれば問題なく承認が受けられますが、②や③に該当する場合は、あらかじめ除去しておく必要があります。
なお、解決不能な項目に該当してしまう場合には、残念ながら引き取ってもらうことができません。
① 崖になっていて管理が困難である(崖の定義:高さや傾斜は未定)
② 土地の利用を阻害する物(工作物、車両、樹木等)が地上に置かれている
③ 土地の利用を阻害する物が地下に埋まっている
④ 土地を利用するために隣接する土地の所有者等との訴訟が必要である
⑤ その他通常の管理や処分に過分の費用や労力を有するもの

手続きの申請には申請手数料の支払いが、承認をされた後には負担金の支払いが必要となります。
具体的な支払金額がどのくらいになるのかはまだ未定です。
この手続きの利用を検討する際には、国に引き取ってもらうコストと自分で所有し続けるコストを天秤にかけて判断することになります。

早めの準備を!

この制度によって、農地や山林の処分方法について選択肢が増えました。
ですが、いざ相続が発生してから行動をおこすのは大変です。
まずは今のうちから、将来的に不動産をどうしたいのか、ご家族で話し合ってみてください。

もしも農地や山林は処分してしまいたいという結論になったら、所有者が元気なうちに近隣の農家に売却の話を持ち掛けてみたり、買い手が見つからなければ相続人の誰かが相続した後に国に引き取ってもらえるよう早めに準備しておくことをお勧めします。

当事務所では不動産の売買や相続対策についての相談を常時受け付けております。
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