執筆日:2021.05.24

所有者不明土地をめぐって②相続と住所変更の登記が義務に!?

司法書士

竹下康智
この著者の他の記事
こんにちは、司法書士の竹下です。

前回の記事でご紹介したように、4月21日に「所有者不明土地問題」の解消を目指した民法・不動産登記法の改正案が可決されました。
連載2回目の今回はその内容についてご紹介したいと思います。

義務ではなかった登記が義務に

前回ご紹介したとおり、本来、不動産の登記申請は義務ではありません。

しかし、所有者が明らかでない不動産、いわゆる「所有者不明土地」が社会問題化しているという社会的な背景から、そういった不動産が発生することを予防するために、一部の不動産登記が義務化されることになりました。
これらの法律は、2024年を目途に施行される予定です。

義務化される登記その1 相続登記
まず、相続登記が義務化されました。
自分が相続人となる相続が開始されたことを知り、なおかつその相続によって不動産の所有権を取得したことを知った日から3年以内に、所有権の移転登記申請をしなければならないこととなりました。

相続人申告登記(仮称)の創設
とはいえ、相続登記の義務を負っても、すぐに遺産分割協議(遺産の分け方に関する相続人どうしの話し合い)が成立するケースばかりではありませんね。
たとえば、相続人の中に行方不明の人がいたり、話し合いがこじれてなかなか決着できなかったりすることも考えられます。

そこで、相続登記の義務が生じたら、その相続人が、相続が開始したことと、自分が相続人であることを法務局に申し出ることで、いったんは義務を履行したとみなされる制度ができました。
ただし、申し出のあとで遺産分割協議が成立して、不動産の分け方が決まりましたら、その日から3年以内に相続登記の申請をしなければなりません。

義務化される登記その2 住所氏名の変更登記
義務化される2つ目の登記は、住所氏名の変更登記です。
所有者不明土地の多くは、住所や氏名の変更登記が完了していない土地でもあります。変更されていないため、所有者の追跡ができなくなってしまっているのです。
そこで、不動産の所有者は、住所や氏名が変わったら2年以内に変更の登記を申請しなければならないことになりました。

申請義務に違反したら・・・
登記の義務化に伴い罰則が設けられました。
正当な理由なく申請を怠ると、相続登記については10万円以下、住所氏名の変更登記については5万円以下の過料が課されることになりました。

登記は早め早めに

登記の義務化がマスコミ等で報じられた際、罰則についても大きく取り上げられました。
読んでくださっている方の中にも、その点が気になっていらっしゃる方が多いでしょう。
実は、罰則は当面の間、かなり緩やかな運用がされるようです。

1つ目の理由として、はじめにご説明したとおり、原則として不動産の登記は義務ではなく、この法律改正は行政上の都合によるところが大きいことが挙げられます。
また、2つ目の理由として、正当な理由があれば義務違反にはならないからです。
以上の理由から、法律が改正されたからといって、急にビシビシと取り締まりが行われることはないようです。

だからといって、相続発生後に登記を放置していると、新たな相続により相続人が増えてしまううえ、相続人どうしの関係が希薄になっていき、いざ登記を申請しようとする際に話をまとめるのがとんでもなく大変になってしまいます。

ご説明したように、法律の施行は2024年とまだ3年ほど先です。
ですが、ご自身の権利を守るため、義務があるかどうかにかかわらず、登記は早め早めに済ませておくことをお勧めします。