執筆日:2021.01.27

遺言相談ファイル1「親と同居の不動産を相続したい」

司法書士

小笠原 葵
この著者の他の記事
ある晴れた冬の日、AGORA相続サポートプラザに、鈴木静夫さんというお客様が相談にお見えになりました。
小笠原   
「こんにちは。今日は寒い中、相談にお見えいただいてありがとうございます。
早速ですが、ご相談はどのようなことですか?」
鈴木さん
「実は同居している私の父が亡くなった際の相続のことが心配で・・・
母は亡くなっており、父ももう82歳だものですから。」
小笠原
「そうですか。具体的にはどのようなことがご心配なのですか?」
鈴木さん
「私たちの自宅の土地の名義は父、建物の名義は私になっています。
父の身の回りの面倒は主に私の妻が見ていて、土地の固定資産税も私が払っています。
ですから、父は自分が亡くなったら遺産は全て私が相続すれば良いと言ってくれています。」
小笠原
「そうですか。それは安心ですね。」
鈴木さん
「ところが、心配なのは私の妹です。
妹は私が遺産を全部相続することに納得がいかないようです。自分も相続人として遺産の半分をもらう権利があると言っています。父の面倒を見るとか、資金的な援助をしてくれているわけでもないのに・・・
半分といっても、父の財産は土地のほかには預貯金が700万円ぐらいで、私たち家族が住んでいるので、土地を半分に分けるわけにもいかないですし。」
小笠原
「なるほど。でしたら、お父様に公正証書で遺言を作成してもらったらどうでしょう。
そうすれば、お父様が亡くなった後、妹さんが協力してくれなくても、土地の名義変更手続きをすることができます。」
鈴木さん
「それはいいですね。遺言で「全財産を私に相続させる」と書いてもらえば、妹には何も渡さなくても大丈夫のなのですか?」
小笠原
「妹さんには「遺留分」があります。ですから、妹さんには預貯金の中から、遺留分の金銭を残しておけば安心です。
今回の妹さんの遺留分は相続財産の4分の1なので

(土地の評価額2000万円+お父様の預貯金700万円)÷4=675万円

になります。」
鈴木さん
「遺留分については、わかりました。でもそれで妹が本当に納得するかな・・・」
小笠原
「遺言書の中に、鈴木さんの奥様が面倒を見てくれたおかげで施設に入らないですんだ、その分のお金が節約できたなど、相続財産を減らさないために奥様が貢献したことを具体的に書いてもらったら良いと思います。」
鈴木さん
「よくわかりました。一度、父と相談してみます。」

後日、鈴木さんのお父様ともご面談させていただいて、公証役場で遺言を作成することにしました。鈴木さんもお父様も安心されたようでした。
AGORA相続サポートプラザでは、このような相談風景がよく見られます。
皆さま、心配ごとをお話しされて、解決の糸口を見つけ、ほっとした表情でお帰りになられます。
もちろん、すぐには解決しないことも多いですが、まずは心の重荷を下ろして、問題点を洗い出すことだけでも、心は軽くなります。
ちょっと気になることを聞いてみたい、そんな気軽さでご相談に来ていただけると嬉しいです。
ーーー今回のブログ担当 司法書士 小笠原葵------
神奈川県在住。新米司法書士だったころ静岡で働き、育ててもらった縁で、2020年9月より、再び司法書士法人つかさに所属。神奈川県内の登記、リモートにてAGORA相続サポートプラザのPRを担当。
もっと相続の相談を身近にしたい、知ることによって安心してもらいたい、と日々考えています。
冬の主食は柑橘類、中でも伊予柑が好き。
            ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー